学生時代のいじめ、定時制高校で出会ったさまざまな価値観、そして約8年間の俳優活動。
決して一直線ではなかった人生の先で、佐藤大地さんがたどり着いたのが、自身のアパレルブランドUMBRELLA BOXだった。
服に救われた経験があるからこそ、今度は自分が誰かにとっての「居場所」をつくりたい。
ブランドに込めた思いと、これから描く未来について話を聞いた。
まずは簡単に自己紹介をお願いします。
佐藤大地と申します。神奈川県川崎市出身で、36歳です。
現在は個人事業主として、アパレルブランドUMBRELLA BOXを運営しています。
アパレルブランドを立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
僕はずっとアパレル業界で働いてきて、いろいろなブランドを経験してきました。
その中で、会社の環境だったり、働き方だったり、いろいろと思うところがあったんです。
特に前職では、現場で働いている人たちが一番大切にされているとは感じられなくて。
そういう環境でストレスを抱え続けるくらいだったら、
「人生は一回きりだし、リスクを取ってでも自分でやってみたい」と思うようになりました。
それがブランドを始めたきっかけですね。
お客様には丁寧な接客を求める一方で、働く人は大切にされていない。
そのギャップにも違和感があったそうですね。
そうですね。
洋服を丁寧に扱うのと同じように、人間のこともちゃんと丁寧に扱うべきだと思っているんです。
お客様には正しく接するのに、従業員には良い環境を用意しない。
それは僕自身、あまり好きではありませんでした。
だから自分がこれから会社をつくって、人を雇うようになったときには、
「ここで働いてよかった」と思ってもらえる環境にしたい。
お客様だけではなく、一緒に働く人も大切にできるブランドにしていきたいと思っています。

UMBRELLA BOXという名前には、どんな意味が込められているのでしょうか。
僕は学校でも家でも、社会に出てからも、結構いじめられたり、いじられたりすることが多かったんです。
体格が大きいので、外見だけを見ると強そうに思われるんですけど、実際はそうではなくて。
学校でも人間関係がうまくいかないことがあって、
「生きていてもあまり面白くないな」と感じていた時期がありました。
そんな中で出会ったのが洋服でした。
好きな洋服を着ているときだけは、変に気取ったり、周りに合わせたりしなくていい。
自分の素を出せる時間だったんです。
だから僕自身が洋服からもらったものを、今度はいろいろな人に届けたいと思いました。
UMBRELLA BOXには、僕の中で「居場所」という意味を込めています。
このブランドや洋服が、その人にとって安心して自分らしくいられる場所になればいいなと思っています。
実際の商品づくりでは、どんなことを意識していますか。
「居場所」というテーマがあるので、着る人自身が好きな洋服と
自由に組み合わせてもらえるものにしたいと思っています。
基本的にはシンプルなものが多いですね。
いろいろな人に着てもらいたいので、奇抜すぎて合わせるものを選んでしまう服にはしたくない。
でも一方で、完全に普通のベーシックウェアをつくりたいわけでもありません。
その中に佐藤さん自身の個性も入っている?
そうですね。
自分の中では「普通じゃない普通」という感覚があります。
例えば、ただ普通にロゴを並べるだけではなくて、少し形を変えてみたり、コミック調にしてみたり。
ベースはシンプルなんですけど、どこかにちょっとしたインパクトや遊びを入れたいんです。
普通に着やすいけれど、よく見ると普通ではない。
そういう服が好きですね。
現在はどんなアイテムを展開していますか。
TシャツやロンT、パーカーなどが中心です。
これからはジャケットなども含めて、もっといろいろなアイテムを展開していきたいと思っています。

ブランドを立ち上げる以前には、俳優をされていた時期もあったそうですね。
そのあたりの人生も聞かせてください。
高校は定時制に通っていました。
昼間はアルバイトをして、夜に学校へ行く生活です。
定時制には同年代だけではなく、ご年配の方もいて、本当にいろいろな人生を歩んできた人たちがいました。
そこでいろいろな話を聞かせてもらったんです。
その中で、「人生は一回きりなんだから、自分が納得できることをやった方がいい」と言ってくれる人がいて。
それを聞いて、自分もそういう人生を歩こうと思いました。
そこから俳優の道へ?
20歳くらいの頃ですね。
もともと映画がものすごく好きで、クリント・イーストウッドも好きでした。
「こんなすごい人に会ってみたい」と思ったこともきっかけになって、俳優を目指すようになりました。
そこから27、28歳くらいまで活動して、映画や舞台などにも出演させてもらいました。
俳優として活動した期間には、本当にいろいろなことを学べたので、やってよかったと思っています。
子どもの頃は周囲に合わせることを求められていた。
でも定時制高校ではさまざまな世代や価値観と出会い、その後は俳優として自分を表現する世界へ進んだ。
振り返ってみると、少しずつ「自分らしく生きる方向」に進んできたようにも見えます。
そうですね。
普通の高校に行って、そのまま普通の大学に進んでいたら、
逆に今みたいな人生にはなっていなかったかもしれません。
普通のサラリーマンになっていた可能性もあると思います。
定時制に行ったことは、自分にとってすごく大きかったですね。

これからUMBRELLA BOXを、どんなブランドにしていきたいですか。
まず今月から、公式アンバサダーを決めるためのライブ配信企画を始めます。
SHOWROOMで配信オーディションを行って、その中からアンブレラボックスの公式アンバサダーを決める予定です。
アンバサダーになった方には、モデルとして活動してもらうだけではなく、
今後は洋服のデザインにも関わってもらえるようにしたいと思っています。
ブランドとアンバサダーが一緒に商品をつくるわけですね。
そうですね。
ファンの方にも喜んでもらえると思いますし、アンバサダー本人にとっても、
自分が関わった洋服が形になるのは嬉しいと思うので。
そういう取り組みを増やしていきたいです。
さらに、その先には実店舗も考えている?
実店舗は出したいですね。
ネットショップだけだと、どうしても実際にお客様の顔を見ることができないじゃないですか。
僕がやりたかったことの一つは、やっぱり人と直接接して、接客をすることなんです。
だからいつかはお店を持って、お客様と直接会える場所をつくりたいと思っています。
いきなり店舗を持つのが難しければ、まずはポップアップなどから始めてもいいと思っています。
法人化についても考えているそうですね。
来年あたりには法人化したいと思っています。
今、そのための動きも少しずつ始めています。
ブランドをもっと大きくして、実店舗も持って、人が集まれる場所にしていきたいですね。

最後にフロンティアプレスの読者へメッセージをお願いします。
やりたいことはあるけれど、一歩踏み出せない人も多く読んでいます。
まず「人生は一回きりだ」ということは意識した方がいいと思います。
もしかしたら明日死ぬかもしれない。
それくらいの気持ちで何かを決断して、行動することが大事なんじゃないかなと思っています。
何かを始めようとすると、「売上はどうするの?」「失敗したらどうするの?」って、
みんなマイナスのことを考えるじゃないですか。
でも、お金のことやマイナスのことばかり考えていたら、いつまで経っても始まらない。
僕は、生まれてきたときはみんな何も持っていなかったんだから、それと同じだと思っているんです。
何もないところからでも、とにかく進んでいく。
まず行動する。
そうすれば、周りの人が手伝ってくれることだってあります。
大人になると、いろいろなことを気にしすぎるようになると思うんです。
だから、気にしすぎなくていい。
自分が「やる」と決めたなら、やればいいと思います。
周囲に合わせるしかなかった少年時代から、自分を表現する俳優の世界へ。
そして現在は、自らの価値観をそのまま形にできるブランドの立ち上げへ。
佐藤大地さんの歩みには、一貫して「自分の人生を自分で選ぶ」というテーマが流れている。
かつて洋服が佐藤さん自身の居場所になったように、UMBRELLA BOXが誰かにとって、自分らしくいられる新しい居場所になっていく。
その挑戦は、まだ始まったばかりだ。

