アパレル、美容、飲食、婚活という、一見すると異なる四つの事業を展開する株式会社UPBEAR。
その根底にあるのは、「外見を整えるだけで終わらず、その先の人生まで豊かにしたい」という一貫した考えだ。
アパレル販売員から独立し、脱毛サロンとアパレルショップをほぼ同時に立ち上げた中谷さん。
その後、無人古着店のフランチャイズ展開や結婚相談所へと事業領域を広げてきた。
しかし、中谷さんの言葉から感じられるのは、派手な野心や一発逆転への憧れではない。
「お客様にとって価値のあるものを作り、目の前のことをコツコツ続ける」
その積み重ねによって事業を成長させてきた、中谷さんの経営観に迫った。
まず、株式会社UPBEARでは、どのような事業を展開されているのでしょうか。
現在は、アパレル、美容、飲食、婚活の四つを柱に事業を展開しています。
一見すると、それぞれ別の事業に見えるかもしれません。ただ、僕たちの中ではすべてつながっています。
アパレルや美容を通じて、お客様の外見をより良くする。その先には自信が生まれたり、恋愛や結婚といった次のライフステージにつながったりすることがあります。
外見を整えるところから、その後の人生までお手伝いできる会社にしたいと思っています。
最初から、現在のような構想を描いていたのですか。
いえ、最初から大きな構想があったわけではありません。
自分たちに何ができるか、お客様にもっと貢献するためには何が必要かを考える中で、「これもあった方がいいよね」と事業が少しずつ広がっていきました。
初めから何でも計画していたというより、お客様に必要とされるものを一つずつ増やしてきた感覚に近いです。
アパレルも美容も競合が多く、店舗運営の難しい業界です。その中で事業を成長させられた理由は何だと思いますか。
シンプルに言えば、お客様にとって価値のあるものを作り、それをきちんと届けてきたことだと思います。
商品の説明や見せ方を工夫することは大切です。ただ、実際には付加価値がないものを、言葉だけで特別なものに見せて高く販売する方法もあります。
僕は、そういうことをしたくありませんでした。
お客様が自分たちを信じて購入してくださったのに、心の中では「本当はそこまでの価値はない」と思いながら販売するのは違うと思っています。
それでは、スタッフも自信を持って接客できません。
だからまず、「うちのサービスは本当にいいですよ」と、スタッフが心から言える商品やサービスを作ることを大切にしました。
客単価を無理に上げるのではなく、喜んでもらえるお客様を増やしてきたのですね。
そうですね。
もちろん、高い金額をいただくこと自体が悪いわけではありません。きちんと付加価値があるなら、それに見合った価格をいただくべきだと思います。
ただ、付加価値のない部分まで無理に高くするのではなく、適正な価格で良いものを提供する。そこで喜んでくださるお客様が増えれば、結果的に売上もついてくると考えています。
変な近道をしなかったことは、大きかったと思います。

中谷さんが起業を考えたきっかけを教えてください。
それほどドラマチックな話ではありません。
以前はアパレル販売員として働いていたのですが、給与面で厳しい部分がありました。一方で、転職しようとしても、自分には分かりやすい資格や手に職があるわけでもありません。
そうなると、未経験から厳しい営業職へ転職するといった選択肢が中心になります。
どうしようかと考えたときに、「それなら、自分で挑戦するのも一つの方法ではないか」と思ったことが、独立を意識したきっかけです。
最初はアパレルで独立されたのでしょうか。
実は、最初に考えたのは脱毛サロンでした。
当時、僕自身が顔の脱毛に通っていて、独立してサロンを経営されていた方に相談したところ、脱毛事業について教えていただけることになりました。
アパレルは在庫を抱える事業ですが、脱毛サロンは、お客様に来ていただきサービスを提供することで売上になります。小さな店舗から始められ、人員も比較的コンパクトにできる。その点に魅力を感じました。
ただ、準備を進める中で、「肌だけきれいになっても、洋服も大事だよな」と思ったんです。
これまでアパレル業界で働いてきた経験も生かせます。それなら、脱毛とアパレルの両方をやろうと考え、ほぼ同時に立ち上げました。
かなり思い切った決断ですね。
結果的には、二つの店舗を同時に立ち上げたので、約1,000万円を投じることになりました。もちろん、恐怖心はありました。
当時は、将来自分が取材していただけるような経営者になるとは、まったく思っていませんでした。
大きな野望を持って独立したというより、転職先に悩んだ末に、自分で挑戦する道を選んだという方が近いです。
中谷さんは、事業名や店舗名に強いこだわりを持たないそうですね。
そうですね。僕は、名前そのものにはあまりこだわりません。
もちろん、商標などの問題がないかは確認します。ただ、ふざけすぎた名前でなければ、お客様にとっては、それほど重要ではないと思っています。
起業するときに、名前やロゴ、デザインを完璧にしようとして、なかなか事業を始められない方もいます。
でも、それがお客様にとって本当に重要なのかは、分けて考えた方がいいと思います。
一方で、オーダースーツを作りに来た場所が汚れていたら、お客様の気分は下がります。そこは整える必要があります。
無人古着店であれば、主役は商品です。商品で壁が埋まるのであれば、過剰な内装は必要ありません。
こだわるべき部分と、お客様にとって関係のない自己満足の部分を分ける。僕は、そこに余計な時間やお金を使わないようにしています。
ここまで大きな危機を迎えることなく、着実に成長されてきたそうですね。
ありがたいことに、事業全体が大きく傾くような危機は、これまであまりありませんでした。
もちろん、事業譲渡の話が途中でなくなってしまったことなど、個別のトラブルはあります。
ただ、僕はもともと、目の前のことをコツコツ進めるタイプです。大きく資金を集めて、一気に勝負するような経営はあまり得意ではありません。
誰かに迷惑をかける可能性があるなら、無理に大きな夢を追いかけたいとは思わないんです。
投資を集めるだけ集めて、失敗したら「すみません」で終わるようなことはしたくありません。
派手さはなくても、堅実に積み重ねていく。その性格は、自分でも気に入っています。

現在、特に力を入れているのが無人古着店ですね。フランチャイズとしての特徴を教えてください。
一番の特徴は、やはり無人で運営できることです。
スタッフを採用する必要がなく、日常的な業務も短時間の清掃などが中心です。店舗型ビジネスの中では初期費用を抑えやすく、ランニングリスクも比較的低い。
一から独立するのは怖いけれど、すでにある仕組みを活用して事業を始めたい方にとっては、踏み出しやすいビジネスだと思います。
また、加盟店が売れ残った商品を抱え続けないよう、商品を循環させる仕組みも整えています。
古着は、ある地域では売れなかった商品が、別の地域では売れることがあります。複数店舗や法人向けの販売先を持つことで、商品を一か所に滞留させず、できるだけ循環させています。
そもそも、なぜ無人の古着店だったのでしょうか。
きっかけは、スタッフから「古着屋をやりたい」という声が出たことです。
正直に言うと、僕自身は当時、古着をあまり着ていませんでした。そこで、すでに存在を知っていた無人古着店という形なら面白いのではないかと考えました。
もともと運営していたセレクトショップの商品を有効活用できるという意味でも、環境面から見ても相性が良いと思い、比較的軽い気持ちで始めました。
ただ、実際に始めてみると、無人にはお客様側にも大きなメリットがあると気づきました。
お客様側のメリットとは何ですか。
洋服を見ているときに、店員さんから声をかけられることが苦手な方は多いと思います。
実際に声をかけられなくても、近くで見られているだけで落ち着かず、ゆっくり商品を選べないこともあります。
店員さんがいるからこそ楽しいお店もありますが、店員さんがいないからこそ楽しめるお店もある。僕は、両方あっていいと思っています。
無人古着店では、人目を気にせず自分のペースで商品を探せます。古着を“掘る”ような感覚や、思いがけない商品に出会う体験そのものを楽しんでいただけます。
さらに、人件費を抑えた分を価格に反映できます。
物価が上がっている中でも、お客様がファッションを楽しみやすくなる。経営者側は採用や教育、人件費の負担を抑えられる。
無人古着店は、事業者とお客様の双方にメリットを作れる事業だと思っています。
無人であれば、どの業種でも成立するわけではないのですね。
そう思います。
無人にする理由が経営者側にしかないビジネスでは、お客様にとっての価値が弱いんです。
無人化によって価格が下がる、人とのやり取りを気にせず利用できるなど、お客様にも明確なメリットがあるかどうかが重要です。
その点、洋服店は店員さんの声かけを負担に感じる方が多く、無人にする意味があります。
何でも無人にすればいいのではなく、その業種で本当に人の介在が求められているのかを考える必要があります。
UPBEARの無人古着店は、一般的な無人古着店と何が違うのでしょうか。
僕たちが大切にしているのは、「きれいな古着」であることです。
無人古着店の中には、商品が汚れていたり、店内ににおいがあったりするところもあります。価格が安くても、お客様は状態の悪い商品を求めているわけではありません。
僕たちは、状態の良い古着を中心に、ブランド商品や比較的価格帯の高い商品も扱っています。
ただ安いのではなく、「本来これくらいの価値があるものを、この価格で買えた」という値ごろ感や値打ち感を提供したいんです。
安い商品を大量に並べるのではなく、探す楽しさと、見つけたときの喜びを追求していきたいと思っています。

結婚相談所を始められた経緯についても教えてください。
こちらも、きっかけの一つはスタッフの声でした。
サロンでは、お客様と恋愛の話になることがあります。スタッフが相談に乗り、そのアドバイスをきっかけに良い方向へ進んだという話を聞くこともありました。
そこで、「僕たちが提供している外見の向上は、その後の恋愛や結婚にもつながるよね」と話すようになったんです。
もう一つ、僕自身、これまでは日常を少し豊かにするサービスを多く提供してきました。
洋服や美容、飲食は、日々の幸せやちょっとした贅沢につながります。それだけでなく、「この会社があったから、人生に残る出来事が生まれた」と思ってもらえる事業もやってみたいと思うようになりました。
結婚相談所は、人の一生に関わることのできる、とても素敵な事業だと感じています。
女性スタッフのキャリアという面でも意味があるそうですね。
サロンワークは、どうしても体力を使います。
若いうちは続けられても、年齢を重ねた後に、同じ働き方を長く続けられるかという課題があります。
また、女性は結婚や出産を機に仕事を一度離れ、その後、以前と同じキャリアに戻ることが難しい場合もあります。
結婚相談所の仕事では、自分自身の結婚生活や子育て、人生経験を、会員様へのアドバイスとして生かせます。
家庭に入ったことでキャリアが途切れたように感じていた方が、自分の経験を使って、もう一度誰かの役に立つことができる。
在宅でも対応できるため、将来的には女性スタッフの新しいキャリアとしても形にしていきたいと考えています。
具体的には、どのように婚活を支援するのでしょうか。
大手の結婚相談所ネットワークのシステムを利用しながら、会員様の活動に伴走します。
プロフィールを整え、お相手を探し、お見合いや交際を進めていく。その過程で生まれる不安や悩みに対して、私たちが相談に乗ります。
マッチングアプリも、現代の出会い方として良いものだと思います。
一方、結婚相談所では、結婚したいという意思を持った方が、必要な情報を開示したうえで登録しています。
本気で結婚したい方にとっては、安心して活動できる近道の一つだと思います。
全員に結婚相談所が合うとは考えていません。ただ、結婚したいのに出会い方が分からず、時間だけが過ぎてしまうことを避けたい方には、一度選択肢として見ていただきたいです。

今後の展望を教えてください。
現在、最も力を入れているのは無人古着店です。
まずは2027年に、無人アパレル業界で店舗数日本一を目指しています。
現在はフランチャイズ契約と直営店を合わせ、すでにその目標が見えるところまで来ています。
その先は、2030年までに200店舗を目指します。
全国に店舗を広げることで、「無人の洋服店っていいものだな」という文化を日本に作れたらうれしいです。
もちろん、ほかの事業も成長させていきたいと思っていますが、まずは無人古着店を、自分たちの代表的な事業としてしっかり作り上げたいと考えています。
最後に、起業したいけれど一歩を踏み出せない方へ、メッセージをお願いします。
会社員であっても、独立していても、目の前のことを真面目にコツコツ続けることが大切だと思います。
一つの店舗、一つの事業を自分で運営するくらいであれば、きちんと価値のあるサービスを作り、当たり前のことを続ければ、成功する可能性は十分にあります。
途中で辞めたり、一つの事業を完成させないまま次へ進んだりするから、崩れてしまうんです。
起業家という肩書きに憧れたり、経営者になった自分を見せることに満足したりするのではなく、まずはお客様に喜ばれるものを作る。
そして、それを必要な人へきちんと届ける。
結局は、それだけだと思います。
今はAIやSNSが発達し、楽をして一発当てるような方法に目が向きやすい時代です。しかし、根底にあるものは変わりません。
お客様にとって価値のあるものを作り、朝起きて、営業して、必要な資料を作り、顧客を大切にする。
会社員時代に当たり前にやっていたことを、自分の事業でも当たり前に続ける。
特別な近道を探すより、その積み重ねの方が、事業を着実に前へ進めてくれると思います。


