「世界にひとつだけを足元に。スニーカーペイントで届ける“自分らしさ”」飴色キックス 小出竜也さん

既製品のスニーカーにペイントを施し、世界にひとつだけの一足へと生まれ変わらせる「飴色キックス」。
和柄からストリート、イラスト調まで幅広い表現を手掛けるのが、小出竜也さんだ。
一見華やかなスニーカーペイントだが、実際の制作では「色を塗ること」以上に、その前後工程に膨大な時間と技術を費やしているという。
今回は小出さんに、スニーカーペイントを始めたきっかけ、作品づくりへのこだわり、仕事に感じてきた違和感、そしてこれから挑戦したい人へのメッセージを聞いた。

まずは、小出さんを知らない読者に、自己紹介を頂けますか?

飴色キックスの小出達也です。

飴色キックスでは、どんな事業をされているんですか?

スニーカーをカスタムペイントして、オリジナルの靴を作っています。

作品を見ると、本当にいろいろなテイストがありますよね。和物もあれば、ストリート系もあって、イラストっぽいものもある。そもそも、なぜスニーカーペイントを始めたんですか?

街中で自分と同じ靴を履いている人がいると、ちょっと恥ずかしいというか。

商品自体が悪いわけでは全然ないんですけど、もう少しオリジナルの要素があったら、もっと胸を張って歩けるんじゃないかなと思ったんです。

絶対に人とかぶらないものだったら、ちょっとした優越感みたいなものもありますし。

それと「そういうものを自分で作れたらいいな」という気持ちが合わさって、一回塗装してみようかな、くらいの軽い気持ちで始めました。

既製品に自分らしさを加えるということですね。いつ頃から始めたんですか?

1年半くらい前ですね。

最初は本当に何の知識もなくて、ただ上から塗料を筆で塗っているくらいでした。

そこから少しずつ勉強して、今ではエアブラシを使ったり、細かいところは筆を使い分けたり、様々な技法を試しています。

素人から見ると、絵を描く技術や色を塗る作業が一番難しそうに見えます。

実は、色を塗ることより下処理の方が大変なんですよ。

スニーカーって、もともと表面がコーティングされています。

その上からそのまま塗装しても、塗料の食いつきが悪くて、履いているうちに剥がれてしまうんです。

靴って外で履くものなので、雨や風にもさらされますよね。

せっかくペイントしても、すぐに剥がれて汚くなってしまったら意味がないじゃないですか。

だから、下処理をかなり大切にしています。

具体的にはどんな作業をするんですか?

まず、アセトンを使って塗装する部分のコーティングを落とします。

そのあとヤスリをかけます。

表面に細かく傷をつけることで、その中に塗料が入りやすくなって、塗料の食いつきが良くなるんです。

ヤスリも一回だけではなくて、240番、600番、1000番くらいと、何段階かに分けてかけています。

ただ、削りすぎると今度は革そのものが出てきたりするので、その加減も必要ですね。

完成品を見ただけでは、そこまでの作業が入っているなんて全然分からないですね。

そうなんですよ。

むしろ誰にも気づかれない部分に、かなり時間を使っています。

色をエアブラシで吹く作業自体は、本当に数分なんです。

乾かす時間を入れても、それほど長くない。

それ以外の何時間という時間を、ほとんど下処理に使っています。

ヤスリがけだけで一日終わることも全然ありますね。

それを聞くと、一点物のハンドメイド作品という意味がよく分かります。

僕自身も最初は、塗装ってもっと簡単なものだと思っていました。

スプレーみたいに、吹けば色がつくというイメージですよね。

でも実際にやってみると、下処理が本当に大事で。

下処理を丁寧にやれば、色も取れにくくなる。

結局、すべては下処理なんですよね。

小さい頃から絵や工作が得意だったんですか?

全然です。

子どもの頃は、自分が美術や工作を好きだとはあまり思っていなかったですね。

むしろ身体を動かすことの方が好きでした。

美術は、下手したら嫌いだったかもしれません。

意外ですね。ずっとアート少年だった方が、この仕事にたどり着くのかと思っていました。

全く違いましたね。

部活もサッカーをやっていましたし、陸上もやっていました。

どちらかというと身体を動かす方が好きでした。

当時から、いつか独立したり、自分で何かを売ったりする人生は考えていましたか?

いえ、全く考えていなかったです。

普通に就職するものだと思っていました。

そこから、なぜ自分で何かを始める方向に気持ちが変わっていったんでしょう?

僕は20歳くらいから働いているんですけど、ずっと少し違和感があったんです。

新しい仕事を始めたときは、何でも面白がってやるんですよ。

でも慣れてくると、すぐに飽きてしまう。

それが昔からずっとあって。

一方で、周りを見ると、みんな当たり前のように同じ仕事を続けているじゃないですか。

それがすごいなと思っていました。

好きだから続けているわけではない人も多いですよね。

そうなんです。

「それって人生で一番やりたいことなの?」と言われたら、別にそうでもない。

でもみんな続けている。

だから、「これが普通なのかな」と思いながら、自分の中ではずっとモヤモヤしていました。

その中で、スニーカーペイントに出会った。

そうですね。

人生は一回きりですし、「もっと若い頃からやっていたら結果も違ったかもしれない」と思うこともありますけど、後々何かにつながればいいなという気持ちでまずは始めてみました。

スニーカーペイントを始めて、一番良かったことは何ですか?

まだ販売自体はこれからなんですけど、周りの人から「一回吹いてほしい」とお願いされることがあるんです。

僕の練習も兼ねているので、お金をもらわずに作ったこともあります。

その人のイメージに合わせて色を塗って渡すと、すごく喜んでくれるんですよ。

それが嬉しいですね。

普段の仕事では、直接誰かに喜んでもらえていることを実感する機会があまりなかったので。

自分が作ったもので相手が喜んでくれる。

それが、自分自身にとってもすごく嬉しいです。

自分が生み出したものを、直接相手に届けられるわけですね。

そうですね。

やりがいなのかもしれないです。

しかもスニーカーなら、その場で喜んで終わりではなく、その後も履き続けてもらえます。

そうですね。

飾って終わりでなく、実際に誰かに履いてくれるのは嬉しいですね。

逆に、事業として大変な部分はありますか?

多分、大変なのはこれからだと思います。

今のところ、技術や丁寧さに関しては、自分の中ではしっかりやっているつもりです。

ただ、これから認知してもらうためには、自分自身が努力していかないといけない。

今はまだ趣味の延長に近いところもあるので、これからいろいろ出てくると思います。

今のところはまだ楽しいのみですね。

個人で仕事をするとなると、作品を作るだけではありませんよね。営業も必要ですし、認知を広めるためにはマーケティングも学ぶ必要になる。

そうですね、全くその通りです。

「好きなことを続けるために、好きではない仕事もやらなければならない」というフェーズがこれから来るのかもしれません。今後は、どんな展開を考えていますか?

まずは、この1年くらいでオーダーを取っていきたいですね。

オーダーをもらうことが、自分自身のモチベーションにもなると思っています。

僕自身が楽しく続けるためにも、オーダーを取っていきたい。

最初からいきなり大きくしようとは思っていません。

まずは自分の周りからでもいい。

自分が作ったものが誰かに届けばいいなと思っています。

先ほど、人に喜んでもらえることが嬉しいという話がありました。小出さんにとって、人との関係も活動を続ける大きな理由になっていますか?

そうですね。

僕はもともと、そんなに人が好きというタイプでもなかったんです。

人付き合いが苦手というほどではないですけど、疲れることもありますし。

でも最近、結局「愛」みたいなものが大事なのかなと思うようになって。

愛って言うと、ちょっと大げさで恥ずかしいですけど(笑)。

人に対する感謝とか、相手を思い遣ることとか、そういうものが結局一番大切だと、物作りを通じて今になって思うようになりました。

これまでの出逢いや、歳を重ねてから始めた創作が、少し謙虚にしてくれたのかもしれないですね。

スニーカーという物を通じて、誰かが喜んでくれて、その喜びがまた次の作品を作るエネルギーになる。非常に分かりやすく人とのつながりが生まれる仕事ですよね。

そうですね。

人を笑顔にしたいですし、それが形にも残りますしね。

最後に、「何かやりたいけれど、自分が何をしたいのかまだ分からない」「興味はあるけれど一歩を踏み出せない」という人に、何か伝えたいことはありますか?

本当に、何でもいいと思います。

今って、何でも好きなことがお金に繋がる可能性がある時代じゃないですか。

だから最初のきっかけなんて、本当に何でもいい。

僕だって、ただ靴が好きだったことと、たまたま家に塗料があったことがきっかけです。

「この二つを掛け合わせたら、何かできるんじゃないかな」と思って調べたら、海外でやっている人がいた。

じゃあ自分もやってみよう、という流れでした。

自分が好きなことや、ちょっとでも興味があることなら、何でもいいと思います。

まずやってみたらいい。

始めは本当に軽い気持ちでいいと思います。

最初から「これで人生を変える」と考えなくてもいいんですね。

いいと思います。

最初から気負いすぎると、どこかで億劫になってしまったり、すぐに諦めて続かなかったりすると思うんです。

だから、一番続けられることがいい。

好きなものや、興味があるものから始めたらいいと思います。

ほんの少しずつでもいいと。

全然いいと思います。

僕も、黙々と10分くらい作業しているだけで、嫌なことを忘れられることがあるんですよ。

日々のストレスを忘れて、自分なりの気分転換になる。

思えばプラモデルを作っていたときもそうでした。

仕事や勉強、家庭の合間にほんの少し、無心になれる時間があるだけでもいいと思います。

筋トレでもいいし、ゲームや漫画、歌が好きならカラオケでもいい。
あなたが好きなこと、きっとあると思います。

どれが副業や遣り甲斐に繋がるか、全てに可能性があると思います。

「人とかぶりたくない」、「自分にしか出来ないことはないか」。
そんな小さな違和感から始まった、飴色キックス。
最初から起業を目指していたわけでも、幼い頃からアートの道を志していたわけでもない。
好きだったスニーカーと、身近にあった塗料。
その小さな掛け合わせから、小出竜也さんの新しい挑戦は始まった。
それでもこの取材直後、個人からの複数のオーダーや、企業からの大口オファーが舞い込んできたとのこと。
そしてその姿は、「やりたいことが見つかってから動く」のではなく、まず少し動いてみた先に、やりたいことが見つかることもあると教えてくれる。
人生を変えるほどの大きな決断でなくてもいい。
まずは一日10分。
自分が少しでも好きだと思えることから始めてみる。
その小さな一歩が、いつかあなただけの“色”になっていくのかもしれない。

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