肩こり、腰痛、頭痛、不眠、PMS。
身体の悩みを抱えていても、「運動した方がいいのは分かっている」「ジムや整体に通ってみたけれど変わらなかった」という人は少なくない。
そんな一人ひとりの身体と生活に寄り添い、店舗を持たない出張型のパーソナルトレーナーとして活動しているのが、四方田隼人さんだ。
レンタルジムやスタジオを活用し、国分寺、新宿、目黒、中目黒、五反田などを中心に、依頼があればその他の地域にも足を運ぶ。
だが、四方田さんが提供しているのは、単に「70分間、一緒に筋トレをする」というサービスではない。
必要に応じて自宅でできる運動を動画で送り、食生活についてアドバイスをし、時にはオンラインで話を聞く。
目指しているのは、トレーニングを教えることではなく、悩みを一緒に【根本改善】して、お客様が自分の身体や人生と向き合い、笑顔になるきっかけをつくることだ。
そのスタイルにたどり着くまでには、長く続けた野球、会社員生活、勤務先のジムの閉鎖、仕事を失った経験、そして母と妹の存在があった。
「昔の自分は、本当に何もしていなかった」
そう笑う四方田さんは、追い込まれたからこそ学び、変わり、自分だけの仕事をつくってきた。
その歩みを聞いた。
現在はどんな活動をされているのでしょうか。
主に腰痛をメインに肩こり、頭痛、不眠だったり、女性であればPMSなど、いろいろな身体の悩みを抱えている方に向けて、その悩みを【根本改善】していくためのパーソナルトレーニングをしています。
特定の店舗は持っていなくて、レンタルジムやレンタルスタジオを利用する出張型ですね。
国分寺、新宿、目黒、中目黒、五反田あたりが多いですが、条件が合えばそれ以外の場所にも行きます。
以前来てくださっていた方で、出産をきっかけに一度お休みして、1年以上経ってからまた戻ってきてくださったママさんがいるんです。
その方の場合は北千住だったので、別途交通費をいただいて、お伺いしてます。
一般的なスポーツジムのトレーナーとは、どんな違いがありますか。
一般的なジムでも、もちろんマシンの使い方やトレーニング方法は教えてもらえます。
ただ、たとえば腰痛に悩んでいる人、肩こりがある人、お尻を上げたい人では、本当は必要なことがそれぞれ違うはずなんです。
僕が大切にしているのは、トレーニングをしている50分、60分だけを見ることではありません。
本当に身体を変えていこうと思ったら、僕と会っていない時間の方が圧倒的に長い。
だから必要な方には宿題も出しますし、「この癖があるから家ではこれをやってください」と動画を送ることもあります。
食事についてお伝えすることもありますし、希望する方とはオンラインで話すこともあります。
身体の悩みだけではなく、時にはプライベートの相談をされることもあります。
僕はお客様に、
「僕をうまく使ってください。できることなら、いくらでも力になります」
と伝えています。
パーソナルトレーニングという名前ではありますけど、僕が見ているのは、その人の70分ではなく、その人の生活そのものなんです。

もともと、なぜトレーナーの世界に入ったのでしょうか。
大学までずっと野球をやっていました。
卒業後は新卒で大手ジムの本社に入ったんです。ただ、その時はトレーナーではありませんでした。
自分ではトレーニングを続けていて、周りには大会に出ているすごい方もたくさんいました。
同期からも「大会に出てみようよ」と誘われて、僕も出場したんです。
そこで入賞することができて。
それをきっかけに、
「もしかしたら、自分もトレーナーとしてやれるんじゃないか」
と思うようになりました。
その後会社を辞め、ご縁があって目黒の小さなパーソナルジムで働かせてもらうことになりました。
そこが、今の自分につながる大きな転機でした。
それまで持っていたトレーニングの常識が変わったそうですね。
完全に変わりました。
当時の僕は、完全に「筋トレの人」だったんです。
猫背だったら胸をストレッチして背中を鍛えればいい。
反り腰なら背中をストレッチしてお腹を鍛えればいい。
正直、そのくらいの感覚でした。
ところがそこで出会った先輩から、筋肉や骨だけではなく、感覚だったり、神経だったり、眼球の働きだったり、もっといろいろな視点が必要だと教わったんです。
最初は全然理解できませんでした。
「何それ?」
という感じです(笑)。
今まで自分が正しいと思っていたものを、根本からひっくり返された感覚でしたね。
そこから現在のスタイルへ変わっていったのですか。
実はその頃の僕って、本当に自己投資をしていなかったんですよ。
お客様には「自分に投資してください」と言っているのに、自分は休みの日にお酒を飲んで浪費に使っている。
今考えると全然ダメですよね(笑)。
分からないことがあれば、先輩やオーナーに聞けば教えてもらえる。
どこかでそれに甘えていたんだと思います。
ところが、そのジムがなくなることになった。
「これから自分でやらなきゃいけない」となった時に、初めて、
「もう誰にも頼れない。自分で勉強しないとまずい」
と思ったんです。
強制的に、自分で立たなければならない環境になった。
そうですね。
そこから筋肉や解剖学だけではなく、もっといろいろなことを学ぶようになりました。
同時に、自分で集客もしなければいけません。
Instagramにも力を入れようと思って、年間100万円くらいのコンサルにも申し込みました。
当時の自分からしたら大きな金額でしたけど、「もうやるしかない」と思ってカードを切りました。

そこでブランディングも変わっていったんですね。
Instagramで同業のトレーナーをたくさん見るようになったら、あることに気づいたんです。
みんな似ているな、と。
身体はもちろんムキムキで、ピチピチのシャツを着て、刈り上げて、日焼けしていて……。
実は僕自身も当時はそっち側だったんです(笑)。
でも、
「このままでは自分も埋もれるな」
と思いました。
知識や技術は、一日で突然身につくものではありません。
だったら、まず見た目から変えてみようと思ったんです。
現在のハットやシャツのスタイルですね。
そうです。
女性をメインのお客様にしていこうと考えた時に、筋肉を強調した格好の男性が目の前に来たら、一般の女性からすると怖く感じる人もいるだろうなと思ったんです。
街を歩いていて「この人おしゃれだな」と思ったら服装を覚えておいて、古着屋さんで似たものを探したり。
最初はいろいろ試していました。
そのうち、
「毎回格好が違ったら覚えてもらえないな」
と思って、ハットを固定して、シャツを着るようになりました。
夏は暑いんですけどね(笑)。
見た目を変えるのと同時に、学ぶ内容も変わっていきました。
肩こりや頭痛、腰痛を考えるのであれば、筋肉だけを見ていても足りない。
脳や神経、感覚、心理的な部分などにも学びを広げていったことで、少しずつ結果につながるようになりました。
しかし「差別化しよう」と考えたとしても、女性特有の悩みにまで踏み込む人は多くありません。何か原体験があったのでしょうか。
あります。
一番大きいのは、母と妹ですね。
僕は両親と妹の4人家族なんですが、母は昔から肩こりや偏頭痛に悩んでいたそうなんです。
妹も腰痛だったり、なかなか体重が落ちなかったり、不眠だったり、いろいろな不調を抱えていました。
それを知った時、僕はすでにトレーナーになっていました。
でも当時の僕は、筋トレを教えることしかできなかった。
そこで思ったんです。
「トレーナーになったのに、身近な人すら助けられないんだ」
って。
それは結構ショックでした。
大学時代から女性の友人も多くて、Instagramで発信を始めると、
「こういう悩みがあるんだけど、どうしたらいい?」
「痩せたいんだけど、何をしたらいい?」
と女性から相談を受けることも増えていきました。
それもあって、
「もっと女性の悩みを助けられる人になりたい」
と思うようになったんです。
一番最初のきっかけは、やっぱり母と妹ですね。
現在は自分のスタイルを前面に出されていますが、子どもの頃から人前に立つタイプだったのでしょうか。
どちらかといえば明るい方ではあったと思うんですが、今振り返ると、中途半端だったんですよね。
ずっと野球少年でした。
父も野球をやっていて、アマチュアでかなり高いレベルまでいった人でした。
僕も3歳くらいからバットを振っていました。
小学校では父が監督をしたり、中学でも指導に関わったりしていたので、どうしても周囲から見られます。
キャプテンや副キャプテンのような立場になることもありました。
でも、中学生の時に自分がキャプテンをした試合で、チームが全然まとまらなかったことがあったんです。
そこから、
「もうキャプテンはやりたくない。人前に立ちたくない」
と思うようになりました。
高校へ進む時にも、「上に立ってみんなを引っ張っていけ」と言われたんですが、「僕、キャプテンとか嫌です」と答えたのを今でも覚えています。
高校時代は、むしろ目立たないようにしていました。
結構、陰にいるタイプだったと思います。

そんな四方田さんにとって、独立した最大の喜びは何ですか。
自分のやりたいことを、自分で決めてできることですね。
これは野球経験がかなり影響していると思います。
僕は野球が好きでした。
でも、同時にずっと何かに縛られていたんです。
中学になると休みもほとんどなくて、夏休みも練習。
高校、大学では寮生活も経験しました。
団体競技なので、自分一人だけ休むとか、自分だけ違う練習をするということもできません。
髪型もずっと坊主でした。
3ミリでも「長い」と言われるような世界です(笑)。
髭もダメ。
好きな野球をやるためだから仕方がないと思っていましたけど、もともと僕はそういう「決められること」が好きじゃなかったんでしょうね。
それがフリーになった瞬間、一気に爆発しました。
「もう、自分のやりたいようにやろう」
って。
今は髭も生やしますし、髪も長いですし、ハットも被ります。
自分で決められる。
それはものすごく楽しいですね。
一方で、独立すると自由だけではなく、責任もすべて自分に返ってきます。
そこは本当に大きいです。
皆さんから見えるSNSでは楽しそうに見えるかもしれません。
でも、見えないところでは毎日不安ですし、孤独もずっと感じています。
自分が止まったら、全部止まりますから。
会社員だったら休んでも給料がありますけど、自分でやっていたら誰も保証してくれません。
調子が良い時も動き続けなければいけないし、悪ければやり方を変えなければいけない。
だからInstagramだけではなく、TikTok、YouTube、note、Threadsなども、とにかくやってみています。
ボランティア活動にも参加しています。
もちろん、好きだからやっているのが一番です。
でも、いろいろな人と出会ったり、誰かのために動いたりすることで、自分自身も成長できると思っています。
結局、人は人に助けてもらうものだと思うんです。
だから僕は、
「ギブして、ギブして、ギブする」
という気持ちでいます。
何か返ってきたらもちろん嬉しい。
でも、返ってこなくてもいい。
そもそもギブすること自体が好きなんです。
不安や孤独とは常に戦っていますけど、本当に周りの皆さんのおかげで、ここまでやってこられたと思っています。
独立によって、ご自身も大きく変わったのではないでしょうか。
めちゃくちゃ変わりました。
さっきも言ったように、昔の僕は自己投資なんてほとんどしていませんでした。
でも勤務していたジムがなくなった。
さらに、その約4カ月後には、母校の大学野球部でやっていたトレーナーの仕事も、経費削減でコーチやトレーナーを減らすことになって契約がなくなりました。
一時期、本当に仕事がなくなったんです。
そこで、
「これは本当にやばい」
と思いました。
あの状況がなかったら、ここまで勉強していなかったかもしれません。
追い込まれたから、自分で学ぶようになった。
集客も考えるようになった。
自分の見せ方も考えるようになった。
そういう意味では、仕事がなくなった経験が、自分を変えてくれた部分はすごく大きいですね。

今後はどんな未来を描いていますか。
「お客様を何人にしたい」とか「年収をいくらにしたい」とか、そういう明確な数字は、今のところ一番には置いていないんです。
もちろん数字も大事です。
でも僕が一番やりたいのは、
「自分と関わる人の笑顔を増やし続けること」
なんです。
トレーニングのお客様でもいい。
一緒にボランティアをする人でもいい。
ご飯を食べたり、お酒を飲んだり、ただ話をするだけでもいい。
「よもちゃんと話したら元気になった」
「話しやすいから相談しちゃう」
「よもちゃんに言われてやってみたら、新しいことにハマった」
そういうことを言ってもらえるのが、本当に嬉しいんです。
だから、もっと僕自身を知ってもらって、僕と関わる人を増やしていきたい。
昔は、
「四方田隼人からトレーニングを教えてもらう理由って何だろう」
とずっと考えていました。
技術だけなら、すごい人は他にもたくさんいます。
サービスだって、似たものはある。
じゃあ、何が自分だけの武器なのか。
今は一つの答えが出ています。
「僕という人間そのものが商品になること」
です。
昔から人当たりや人間性を褒めていただくことはありました。
だったら、そこを究極まで磨いていこうと思っています。
いろいろな人と会う。
ボランティアもする。
新しい場所にも出ていく。
そうやって人間として深みを増していく。
最終的には、
「何を買うかではなく、四方田隼人だから関わりたい」
と思ってもらえる人間になれたら、一番嬉しいですね。
最後に、今の人生にくすぶっていたり、挑戦したい気持ちはあるのに一歩踏み出せない読者へ、メッセージをお願いします。
僕が言えるような立場なのかは分かりません。
でも、一つすごく思うのは、
人生って一回しかないじゃないですか。
結局、「自分が自分として生きられる人生」は一度しかありません。
だったら、自分が何をしたいのかということを、もっと最優先に考えていいと思うんです。
何かやりたいことがあるなら、一度、他人の意見を置いてみる。
もちろん、いきなり会社を辞めて起業するとか、そんな大きなことじゃなくていいと思います。
「起業したい」と思っているなら、起業するために今日できることは何なのか。
それを今すぐやる。
それだけでも一歩です。
何かを始めようとすると、
「無理だよ」
「できるわけないよ」
と言う人もいると思います。
でも僕だったら、逆に燃えます。
「言ったな。じゃあ見てろよ」
って(笑)。
僕は、
「もし明日死ぬとしたら、何をする?」
くらいの感覚で、やりたいことを考えるのも大事だと思っています。
周りの声を気にして動けなくなる人は、本当に多いと思うんです。
親にどう思われるか。
友達に笑われないか。
恥ずかしくないか。
もちろん親は、自分にとってすごく身近な存在だと思います。
でも、
親の人生ではありません。
自分の人生です。
だから、
「自分は本当は何をしたいんだろう」
という気持ちを、もっと強く持っていい。
大きな一歩じゃなくていい。
今日できることを一つやってみる。
その一歩の先に、今とはまったく違う景色があるかもしれません。
僕自身も、最初から今みたいな人間だったわけではありません。
仕事を失って、焦って、勉強して、試して、失敗して、少しずつ変わってきました。
だからこそ、何か始めたいと思っている人がいたら、まず動いてみてほしいですね。
一度しかない、自分の人生なので。

