自身も障がい当事者でありながら、ファッションデザイナー、モデルとして活躍する合同会社IKUTO代表の佐藤悠理さん。
「障がい者向け」に見えない、誰もが自然に着られる服づくりを目指す彼女。
その原点や起業の経緯、今後の展望についてお話を伺いました。
合同会社IKUTO設立の経緯を教えてください。
服を作るために生地を仕入れようと思った時、個人では購入できる量や取引先に限界がありました。
「もっと自由に服づくりをしたい」と考えた結果、法人として活動した方が可能性が広がると思い、会社を設立しました。
また、それまで温めていた様々な事業アイデアもあったので、それらを形にしていこうと思ったことも理由のひとつです。
服作りはいつ頃から始められたのでしょうか?
高校時代、聾学校(ろうがっこう)の被服科で服作りを学んでいました。
そこで楽しさややりがいを見出したことが大きなきっかけでした。
卒業後はアパレル関係の会社で働いて、その後にしばらく別の仕事をしていました。
ご自身のブランドづくりはいつ頃から始まったのですか?
本格的にデザインを学び始めたのはコロナ禍の頃です。
実は服作りより先にモデル活動をしていました。
ファッションショーにも出演していたのですが、コロナ禍でイベントが次々と中止になり、モデル活動ができなくなってしまいました。
そんな時、以前から交流のあったデザイナーの先生がアパレルスクールを立ち上げることを知り、入学しました。
そこで改めてファッションを学び直したことで、「やはり服作りをやりたい」という気持ちに火が付きました。

「IKUTO」という社名の由来を教えてください。
人を育てる会社にしたいという想いから名付けました。
アパレルだけでなく、障がい者雇用にも取り組みたいですし、人と人とのつながりを通してお互いが成長できる場所を作りたいと思っています。
ブランドの特徴を教えてください。
一見すると普通の服ですが、実は細かな工夫をたくさん取り入れています。
例えば今着ているジャケットは腕を上げても肩が突っ張らない構造になっています。
また、車椅子利用者の方が着るスカートには、タイヤへの巻き込みを防ぐための工夫を施しています。
大切にしているのは、「障がい者向け」と一目で分かる服ではなく、誰が着ても自然でおしゃれに見えることです。
困りごとを解決しながらも、デザイン性を損なわないインクルーシブな服作りを目指しています。
ハンデを持つ佐藤さんだからこその配慮が込められているのですね。
IKUTOの服づくりは、障がい者だけを対象にしているわけではありません。
例えば体型に特徴がある人、着心地に悩みを抱えている人など、多くの人が既製服に不便さを感じています。
そうした「見えない困りごと」を自然に解決することが、IKUTOの服づくりの根底にあります。

モデルやファッション活動で苦労したことはありますか?
一番大きいのは手話通訳の存在です。
仕事の現場に通訳を手配するには費用がかかりますし、遠方での仕事になればさらに負担も増えます。
逆に良かったことはありますか?
覚えてもらいやすいことですね。
障がいをネガティブに捉えるのではなく、自分の個性として発信できれば、それは大きな強みになると思っています。
子どもの頃から社長になりたいと思っていましたか?
全く思っていませんでした。
ろう学校は人数も少なく、目立つタイプでもありませんでした。
会社を作ろうという発想もありませんでしたね。
ただ、服を作りたいという想いが強くなり、その延長線上に会社設立がありました。

今後の展望を教えてください。
アパレルだけでなく、様々な事業に挑戦したいと考えています。
そして特に目立つタイプではなかったこんな私自身が先頭を歩くことで、障がいのある人たちも「自分にもできるかもしれない」と思えるような存在になりたいです。
地方に住んでいても、聞こえないという障がいがあっても、経営者として活躍できる。
そんな前例を作っていきたいと思っています。
佐藤さんが目指しているのは、単なるファッションブランドではありません。
障がいの有無に関係なく、一人ひとりの可能性を広げる社会づくりです。
「普通に見える服」の中に込められた細やかな配慮と優しさ。
その服づくりの先には、誰もが自分らしく挑戦できる未来がありました。


